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PSYCHOEDUCATION / 12

ほめられたことより、嫌なひと言が残るのはなぜ?

ほめられたことは思い出せないのに、昔言われた嫌なひと言は、ふと浮かんでくる。そんな経験があると、「気にしすぎなのかな」と思うことがあるかもしれません。否定的な情報が注意や判断に影響しやすい傾向は、心理学で研究されています。ただし、その理由や現れ方は人それぞれです。

この記事では、否定的な情報が肯定的な情報より強く影響することがある現象を、「ネガティビティ・バイアス」という考え方から紹介します。

この言葉だけで、なぜ特定のひと言が残っているのかを説明しきれるわけではありません。思い出す言葉から、過去の体験や心の状態を決めつけることもできません。自分を責めずに理解するための一つの見方として読んでください。

ネガティビティ・バイアスとは

ほめ言葉をいくつももらったのに、否定的なひと言のほうが気になってしまう。心理学では、否定的な情報が肯定的な情報より注意や評価に強く影響することがある傾向を、ネガティビティ・バイアスと呼ぶことがあります。

研究では、否定的な出来事や情報が、印象づくり、学習、注意などに強く作用する場合が検討されてきました。けれど、「嫌なことはいつも、ほめ言葉の何倍も残る」という決まった法則ではありません。何を比べるか、どのように測るかによって結果は異なります。

そのため、「10回ほめられても1回の否定が必ず勝つ」といった数の比べ方を、誰にでも当てはまる事実として受け取る必要はありません。

嫌なひと言が残る理由は、一つではない

言葉が心に残る背景には、言われた相手との関係、そのときの状況、言葉の意味、繰り返し思い出す機会など、さまざまな要素が関わります。疲れている時期や、同じような出来事が続いた時期には、否定的な言葉に注意が向きやすくなることもあります。

反対に、ある言葉をよく覚えているからといって、必ず深刻な経験があった、現在も同じ影響が続いている、とは言えません。覚え方や受け止め方には個人差があり、一つの理由にまとめられないこともあります。

否定される経験が続いたとき

自分の気持ちや考えを繰り返し否定されると、次に何を言われるかを先回りして考えたり、失敗や批判に注意が向いたりする人もいます。これは一つの可能性であり、誰にでも同じ変化が起きるわけではありません。過去の経験を知らないまま、反応の理由を決めることもできません。

そのような言葉を今も受けていて、関係の中で安全が保たれていない場合は、自分の受け止め方だけを変えようとしなくて構いません。信頼できる人や相談先と、距離の取り方や安全を確保する方法を考えることもできます。

ほめ言葉を受け取りにくいとき

ほめられても「お世辞だ」「たまたまだ」と感じることがあります。その場ですぐに信じたり、前向きに考えたりする必要はありません。まずは、相手がどんな言葉を伝えたのかを、そのまま置いておくこともできます。

たとえば、「助かった」と言われたなら、「相手は助かったと伝えてくれた」と確認するところで止めてもかまいません。自分への評価として受け入れるかどうかは、急いで決めなくてよいのです。

心に残る言葉を、少し整理してみる

振り返ることが負担でなければ、言葉そのものと、その言葉から自分について考えたことを分けてみる方法があります。たとえば、「何を言われたと記憶しているか」「そのとき自分にどんな意味を感じたか」「今の自分はどう受け止めているか」を、書ける範囲で整理します。

これは、無理に良い面を探したり、嫌な気持ちを消したりする練習ではありません。思い出すことで苦しさが強まるときは、途中でやめてかまいません。言葉が何度も浮かび、生活や人との関わりに影響しているときは、専門家と一緒に扱うことも選択肢です。

よくある疑問

嫌なひと言を覚えているのは、トラウマがあるからですか?

その記憶だけで、トラウマの有無を判断することはできません。言葉が残る背景は一つではなく、この記事も診断を行うものではありません。困りごとが続いている場合は、体験を詳しく話すかどうかも含めて、専門家に相談できます。

ほめ言葉を信じられないとき、無理に受け取るべきですか?

無理に信じる必要はありません。相手が伝えた言葉を確認するだけでもかまいません。自分の気持ちが追いつくまで、時間を置くこともできます。

ネガティビティ・バイアスがあれば、悪い記憶のほうが必ず残りますか?

必ずそうなるとは限りません。否定的な情報の影響は、扱う情報や状況、測り方によって異なります。人の記憶や感じ方を一つの傾向だけで説明することはできません。

嫌な言葉が何度も浮かぶときは、どうしたらよいですか?

思い出すことを無理に止めたり、前向きに考え直したりする必要はありません。つらさが続く、眠りや生活に影響する場合は、医療機関や心理職などに相談できます。

参考資料

参考資料は記事作成時に確認したものです。個別の診断や治療方針については、担当の専門家にご相談ください。