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PSYCHOEDUCATION / 13

人の話を聴いているつもりで、自分の正しさを押しつけていませんか?

聴くことと同意することの違い。自分と相手の境界を考える。

誰かの話を聴いているとき、こんなことが頭に浮かぶことはありませんか。

「自分だったら、そうはしないのに」

「どうして、そんなふうに考えるんだろう」

「それは違うんじゃないかな」

相手のことを考えているつもりでも、いつの間にか自分の経験や価値観を基準にしていることがあります。

それ自体は、ごく自然な心の働きです。

ただ、その考えを相手にも当てはめようとすると、話を聴くことが、相手を評価したり、説得したりすることに変わってしまう場合があります。

話を聴きながら、心の中で何が起きている?

私たちは、新しい情報に触れたとき、これまでの経験や知識を使って意味を理解しようとします。

心理学では、こうした理解の枠組みを「スキーマ」と呼びます。

スキーマは、日常生活に欠かせないものです。すべてを一から考えなくても、状況を理解する助けになります。

一方で、自分の経験が強い判断基準になると、相手の話を十分に聴く前に、結論を出してしまうこともあります。

例えば、相手が仕事を辞めようか悩んでいるとき。

「続けた方がいい」

「辞めるなんてもったいない」

そう考えるのは、自分自身が努力を重ねてきた経験によるものかもしれません。

けれど、相手が何に苦しみ、何を大切にしているのかは、まだ十分にわかっていないかもしれません。

「あなたのため」が、相手を苦しくさせることもある

助言には、相手を思う気持ちが込められていることがあります。

しかし、助言する側の「よかれと思って」と、受け取る側が必要としているものは、必ずしも一致しません。

相手は、解決策よりも先に、今の気持ちを言葉にしたいのかもしれません。

自分で考えるために、話を整理したいのかもしれません。

その段階で答えを示されると、相手は「自分の考えは間違っているのかな」と感じることもあります。

大切なのは、助言そのものが悪いということではありません。

相手が何を求めているのかを確かめず、自分の答えを優先していないか。

そこに気づくことです。

自分と違う意見を聞くと、なぜ反論したくなるの?

自分が大切にしている考えと異なる意見に出会うと、戸惑いや不快感が生じることがあります。

場合によっては、自分自身を否定されたように感じることもあるでしょう。

こうした反応には、自分の考えや行動の間に矛盾を感じたときの不快感(認知的不協和)や、自己イメージを守ろうとする心理など、複数の仕組みが関係する場合があります。

ただし、意見が違うときの不快感が、すべて認知的不協和で説明できるわけではありません。

相手の話に反論したくなったとき、すぐにその考えを消そうとしなくても大丈夫です。

「今、自分は何を守ろうとしているのだろう」

そんな問いを持つことが、自分の反応を理解するきっかけになります。

理解することと、同意することは違う

相手の話を理解しようとすることは、その考えに賛成することではありません。

「あなたは、そう感じたんですね」

そう受け止めながら、自分は違う考えを持っていてもいいのです。

また、相手を尊重することは、不当な要求や傷つける言動まで受け入れることではありません。

必要なときには、意見を伝えたり、距離を取ったりすることも大切です。

相手の世界を尊重することと、自分の世界を守ることは、両立できます。

自分と相手の境界を保ちながら聴く

人の話を聴くとき、すべてを理解しようとしたり、問題を解決しようとしたりすると、疲れてしまうことがあります。

もちろん、対人関係での疲れやすさには、体調、環境、相手との関係性、過去の経験など、さまざまな要因があります。

自分の価値観との照合だけが原因とは限りません。

それでも、相手の話を自分の問題として引き受けすぎていると感じるときには、次のような言葉が役立つかもしれません。

  • 「そう感じたのは、どんなことがあったから?」
  • 「今は、話を聴いてほしい? それとも一緒に考えてほしい?」
  • 「私は少し違う考えだけれど、あなたの話をもう少し聴きたい」

無理に同じ答えにたどり着く必要はありません。

わからないことを、わからないままにしておける関係もあります。

聴いていたのは、誰の声

相手の話を聴いているつもりで、自分の正しさを守ろうとしていた。

そんな自分に気づいたとき、責める必要はありません。

気づいたところから、聴き方を変えていくことができます。

答えを急がず、相手の続きを聴いてみる。

自分の考えを持ちながら、相手の考えにも居場所を残しておく。

それは、相手のためだけでなく、自分自身を大切にすることにもつながるかもしれません。

参考資料

参考資料は記事作成時に確認したものです。個別の診断や治療方針については、担当の専門家にご相談ください。