話し終わったあと。
何かが少し軽くなることもあれば、かえって自分の気持ちがわからなくなることもあります。
言葉にしたはずなのに、まだ胸の奥に残っているものがある。
部屋を出ても、気持ちだけがそこに置いてきぼりになっているような。
『帰り道』は、そんな時間を思い浮かべながら生まれた曲です。
話せたからといって、すぐに楽になるわけではない
誰かに話を聴いてもらうことは、ときに大きな助けになります。
けれど、話すことそのものが負担になる場合もあります。
ずっと触れないようにしてきた記憶や気持ちに近づいたあと、疲れたり、ぼんやりしたり、うまく言葉が出なくなったりすることもあるでしょう。
話したのだから、すっきりしなければいけない。
前向きにならなければいけない。
そんな決まりはありません。
話し終えたあとにも、その人の時間は続いていきます。
私は、その時間も大切にしたいと思っています。
足元にある、小さなもの
この曲には、靴下のずれる感覚や、硬いテーブル、帰り道に見えるコンビニなど、ごく普通の風景が登場します。
どれも、特別なものではありません。
ただ、気持ちが大きく揺れているとき、身近なものにふと気づくことがあります。
足が地面についていること。
目の前に、いつもの道があること。
自分が今、ここにいること。
トラウマの心理支援では、現在の環境や身体の感覚に注意を向ける方法が用いられることがあります。
けれど、それが誰にとっても心地よいとは限りません。
呼吸に意識を向けることが苦しい日もあります。
身体を感じようとして、かえって落ち着かなくなることもあります。
そんなとき、無理に続けなくてもいい。
自分に合わない方法から離れることも、大切な選択です。
まだ少し遠い
『帰り道』で描きたかったのは、すべてが元どおりになる瞬間ではありません。
自分の気持ちが、まだ少し遠くにある。
何が起きたのか、十分には整理できていない。
それでも、帰ることはできる。
途中で立ち止まってもいいし、何も考えずに歩いてもいい。
今日のうちに意味を見つけなくてもいい。
「今ここに戻る」という言葉を、私は、すぐに落ち着いた状態になることだとは考えていません。
戻れないように感じる時間も含めて、今の自分に気づいていくことなのかもしれません。
今日は、ここまで
セラピーも、日々の暮らしも、いつも何かが解決して終わるわけではありません。
途中のまま終わる日があります。
話し足りないことがあっても。
まだ涙が出なくても。
答えが見つからなくても。
今日は、ここまで。
そう言って帰れることにも、意味があるのだと思います。
何かを乗り越えた証拠がなくても、その日を終えていい。
『帰り道』は、そんな思いを込めた曲です。
この曲を聴くときに
気持ちを整えようとしなくても大丈夫です。
歌詞を追っても、追わなくても。
途中で止めても、最後まで聴いても。
自分のペースで聴いてもらえたらと思います。
そして、聴き終わったあとにも、何かを感じなければいけないわけではありません。
帰り道は、まだ続いています。